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プーンデーン:タイでは有名な料理材料?ナムプンサイという謎の赤い水の役割

limewater プーンデーン

ナムプンサイというのはプーンデーンという赤い石灰を溶かした水。えらく鮮やかで奇抜なピンク色ですが、タイではいろんな料理に使われます。


写真の赤い粘土のようなものはプーンデーンปูนแดงという石灰。以前、タイの噛みタバコ「キンマーク」の記事でも軽く触れましたが、貝を燃やしてから粉々に砕き、ターメリックを混ぜることで貝のアルカリ性と反応してこのような鮮やかな赤色に変化したものがプーンデーンの正体です。

プーンデーンをプルー(キンマ)の葉に塗ってシガシガやると噛みタバコになりますが、ごく少量のプーンデーンを水に溶かし、その上澄み液(=ナムプンサイน้ำปูนใส)が料理に使われます。

 

ナムプンサイの役割って?

 

ナムプンサイ

使う石灰の量はのんのひとつまみ。入れすぎるととんでもなく苦みが出てしまいます。水で溶いたら一旦濃して、しっかり石灰が水に沈むまで30分ぐらい待ってから上澄みの部分だけを使います。

ナムプンサイには揚げ物をサクサクにしたり、煮物の煮崩れを防ぐ役割があります。

 

ナムプンサイを使う料理・お菓子
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こちらの写真はカノムクロックขนมครก。たこ焼き器に似た鉄板で焼くココナッツミルクのお菓子です。たこ焼きと同じように、外側パリパリ中はとろーりにするため、生地の外側のタネにナムプンサイを入れます。

かぼちゃのココナッツミルク煮なんかも、かぼちゃをナムプンサイにつけておくことで煮崩れを防いで美しい仕上がりになります。ただ、石灰でうっすらコーティングされるため、ちょっと妙な食感が残るので私はあんまり好きじゃないんですが…(^_^;)

 

カノムピアックプーン

ナムプンサイが欠かせないお菓子に「カノムピアックプーンขนมเปียกปูน」があります。この黒色はココナッツの皮の炭からの色づけですが、バイトーイを使って緑色にするものもあります。名古屋名物のういろうに似てるけど、もっともちもちして弾力があります。

それから、揚げ物。天ぷらの衣に普通の水ではなくナムプンサイを使うことで、サックサクに揚げることができます。

 

プーンデーンってどこに売ってるの?

 

プンデーン

こちらはタイのクロントゥーイ市場で見かけたプーンデーン。普通のスーパーに行ってもまず売ってないので、見つけられたらラッキーかも(^_^;)

私がプーンデーンというものを知ったのはバンコクで料理学校に通い始めて間もない頃。日本には存在しないこの謎の赤い粘土がどういう理由で料理に使われるのかがイマイチ分からなくて、その正体をいろんな人に聞きまくってました。

どうやら噛みタバコに使われてる石灰がコレである、ということを教えてくれたのがバンコクで”健幸料理”のお店「saladee(サラッディー)」を経営している野菜ソムリエの青澤さん。タイの野菜に関する本も執筆されてる方なので、知識がとっても豊富です。さらにさらに、saladeeの従業員のタイ人のお姉さんが、当時プーンデーンがどこで売ってるのか見つけられなかた私にわざわざ市場で買ってきてくれたんです。・゚・(*ノД`*)・゚・。ありがとー!!!

 

日本でプーンデーンの代わりになるものはある?

英語ではなぜかred lime pasteと表記されるプーンデーン。(ナムプンサイはlime water)貝から出来てるってことは炭酸カルシウムってことだと思うんですが、そう考えるとあまり体に良いものとは言い難いですよね(^_^;)

使用用途を考えると、炭酸カルシウムではないですが重曹が比較的近いものになるんじゃないかなーと思います。

 

 

POSTED COMMENT

  1. Dr. Taida より:

    初めまして。
    私の妻がタイ人で、よくお菓子を作ります。当然ปูนแดงも冷蔵庫に常備されています。実は私は東京工業大学で長い間化学工学の准教授をしておりました。料理好きでもあります。料理のほとんどは化学工学(化学とは違います)で説明したり、化学工学の知識・理論を使って新しい調理法の工夫をするのを楽しんでおります、変人ですね。

    まず整理しますが、
    1 石灰は炭酸カルシウムです。身体への害は考える必要がないくらいに弱いです。サプリのカルシウムは牡蠣殻の炭酸カルシウムを用いているのがほとんどです。

    2 石灰を水に溶かすと(と言ってもほとんど溶けないんですが)できるのが石灰水だと思い込んでいらっしゃる方が多そうです。実は石灰水は消石灰(水酸化カルシウム)または生石灰(酸化カルシウム)を水に溶かしたもので、石灰である炭酸カルシウムを水に溶かすと炭酸カルシウム水溶液になりますが、これは石灰水ではありません。

    3 そこで炭酸カルシウム水溶液がタイのお菓子などで使われることになりますが、実は私も調べている途中で、その途上でこちらの記事を読ませていただきました。読んでいて、今までよりずっと頭がすっきりとしました。まず重曹のような膨張作用は、料理する温度域では起こりません。ですから別の作用ですね。今考えているのは、小麦粉を練るときにできるグルテンに関わる作用ではないか、ということです。まだ何も証拠も納得のいく説明もない状況です。

    また何かわかりましたら、コメントに書き込みさせていただきます。

    • クラタイ より:

      大変興味深いコメントをありがとうございます!
      専門とされている方からこんなに詳しく教えていただき嬉しく感じると同時に、ブログの力を改めて見直す次第です。しかも当ブログ内でも最も読まれてなさそうなマニアックな記事に…笑

      健康への影響はほとんど無いとのことで安心しました。
      日本にはこういった食材が無い(と思う)ので、代替が出来ないですよね。
      お料理、楽しんでいきましょうね〜。

      • Dr. Taida より:

        クラタイさん(うさぎさん?のことで良いですか?)

        ご返信ありがとうございました。

        ちょっと追加なのですが、おそらく石灰にはグルテン生成を妨げる効果があるのではないかと考えています。グルテンが少ないと、サクサク感がよくなるだけでなく、油切れが良くなり、健康面から考えても良い方向に働いているのではないかと…あくまで私の想像ですので、過信はしないでくださいね。

        今後も効果について報告が見つかったら報告いたします。

        化学工学ってあまり知られていない学問なんですが、実は身の回りの出来事、特に料理法については役に立つことが多いです。

        主に化学的現象を数式化・数値化することで、反応(料理にはつきものですね)を思うように起こさせるにはどのようにしたら良いかをシミュレーションなどで予測する、というのが「真面目な」説明なんです。

        でも、例えば煮物の具に味を良く染み込ませるためには、単に調理時間を長くするのではなく、一旦冷やした後に再度加熱する方が効果的なことは、料理好きな方はすでに実感として経験されていると思います。でも化学工学の方法論でも同じことが予測できるのです。他にも、豚の角煮を一度煮こぼしてから再度煮直す…結構使われている手順だと思いますが、実はこれ臭みが取れるだけじゃなく美味しい旨み成分や水溶性コラーゲンも捨ててしまいます。さらに水で茹でただけでは脂はほとんど抜けません。なぜなら、脂は水に溶けないからですね。じゃあ、どうしたら旨みを捨てずに、脂や臭みをうまく抜き出すことができるか?答えは、比較的低温(自分ではきちんと測定まではしていませんが120〜130℃くらい)でじっくりと揚げるのです。なぜなら、脂や臭みは油に溶け、旨みやコラーゲンは溶けないからなんです。さらに多少の臭みは残りますが、残った油にはラードがたくさん含まれているので、中華の揚げ物に使うと、サクッと美味しく仕上がりますよ。私はこの油(+脂)でよく春巻を揚げますが、おすすめです。もしバラ肉の塊に脂がいっぱいついている場合はなおです。揚げ油不要になります。コラーゲンも摂れます。ラードもいっぱい採れます。他にも半熟玉子と温泉玉子を作り分けることができるのはなぜか、どうしたら速く温泉玉子を作れるか?サイズの異なる駝鳥の卵や鶉の卵で温泉玉子は作れるのか?などなど、いろいろ予測ができるんですね。私も化学工学を基に考えついた調理法が結構あります。

        すみません、長々と…老いてくるとしょうもないですね‍♂️。

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